蜻蛉飛行帖

劇場という場所のファンです

【観劇備忘録】Tangent @ 高谷史郎(ダムタイプ)

開演前。白をベースにした八百屋舞台。黒い拳くらいの石がバランスよく全体に点在している。その舞台をまるで虹のようにアーチで囲む照明の導線。舞台上手後方に背もたれのついたシンプルな椅子。中央にカミシモに長い机。

 

これまでロームシアター・ノースホールで経験した中で最も暗い暗転(完全な闇に近かった)でパフォーマンスが始まる。

闇の中から誰かが地面を規則的に履く音だけが五感を満たす。照明が徐々にフェイド・インし、一人の黒衣の女性が箒で地面を履いている音だとわかる。履くのはすぐに終わる。金魚鉢くらいのガラスの瓶に砂が白い詰まっていて、それを床から両手で丁寧に抱え、長机の上にさらさらと流し落とす。地面の石もいくつか拾い上げて長机の上に配置する。舞台天井からゆっくりと、鏡、酒瓶、小物を支えるXの形をしたもの二つ、あとなんだったけ、が降りてくる。女性は砂や石をランダムに見える手付きで混ぜる。混ざった砂はまるで銀河のように見える。女性は書物を開く。古い文字で書かれていて読めないが、黄道十二宮や天体の軌道などが書かれている。女性は黒いノートを開き、その書物にのっている図を荒々しく書き写そうとするが、うまくいかない。その手元はカメラによって同時に捉えられ舞台奥のホリゾントに投射される。この間、虹の形の導線にそって照明が太陽を連想させるように移動する。空から降りてきた鏡や瓶などは再びゆっくりと上に引き上げられる。机が急に前に倒れ、上に乗っていた石や砂は勢いよく舞台に落ち、暗転する。

明転。舞台中央空中に板。その板にイライラ棒みたいなもので線や幾何学模様をなぞると、ホリゾントにその動きに合わせた軌跡が映る。これはとても美しかった。宇宙の始まりのような花火のような、不思議な模様が出来上がっていた。暗転。

暗転中、また音がする。なんの音だったか忘れた。照明がフェイドインすると、舞台中中央上部から振り子のような球体がぶら下がっている。球体は公転するような軌道を描いて回り始める。球は女性に近づくとノイズを出し、まるでテルミンのようだった。急がいよいよ勢いよく回り始めると、ホリゾントに次々に映し出されるこの世界の様々な場所。それらはどんどん解像度が上がり、音楽も大きくうなり始める。暗転。

 

明転すると、四枚の長方形のおそらく金属の板が上手から順番に横一列に吊るされている。女性がその一つに耳を当てると、どこかの言語で声がする。順番に他の金属板にも耳を当てて、やはり声がする。歴史に生まれた人々の声に聞こえた。しばらく声を聞き暗転。